先日、国民生活センターが公表した【こんなはずじゃなかったのに!“格安スマホ” のトラブル】という報告文書が話題です。内容は“格安スマホ” に関するトラブルの問い合わせが年々増えていて、2016 年は 2015 年(380 件)と比べて 2.8 倍の 1,045 件となっているというものです。
国民生活センター:こんなはずじゃなかったのに!“格安スマホ”のトラブル
こういった内容のものを読んで理解するうえで大事なのは中身の本質や背景です。表面上の内容だと MVNO = トラブルが多いという風に認識してしまいがちですが、実際に中身読んでみると一概にそうとも言えない内容でした。
報告文書の中で、トラブルの事例として以下の 6 つの内容が挙げられています。
- 問い合わせ先が電話窓口しかなく、つながりにくい(60 歳代男性、無職)
- 修理期間中の代替機の貸し出しサービスがなく、スマートフォンが 1 カ月間利用できない(30 歳代男性、給与生活者)
- メールアドレスの提供がなく、別会社のメールアドレスで送ったが、相手にメールが届かなかった(40 歳代女性、給与生活者)
- SIM ロック解除をしないと、他社の SIM カードでスマートフォンが使えなかった(40 歳代女性、家事従事者)
- インターネットで購入したスマートフォンの端末代金に未払いがあり、精算しないと修理の受付ができないと言われた(30 歳代女性、職業不明)
- 発送から数日で利用開始になるとは知らなかった(40 歳代女性、給与生活者)
[blogcard url=”http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170413_1.pdf”]
事例 1 / 2 / 5 は確かに問題
事例 1 / 2 / 5 については確かに改善すべき問題で、特に 5 は未払いがある “赤ロム”品を販売している中古販売業者はについてはヒドイ話ですよね。知識があれば IMEI で調べてネットワーク制限の有無などから “赤ロム” かどうかを確認することはできますが、これは一般的な方法とは言えません。“赤ロム” 品の販売を禁止したり何らかの規定を設けるなどの対策は必要でしょう。(もうあるのかな?)
1 についてはある意味仕方のないことかもしれず、どこのカスタマーセンターもだいたい電話中のことは多いです。今後 AI を利用したチャットボットなどのサービスがもっと普及すれば、電話応対をするほどでもないしょーもない問い合わせにカスタマーセンターが振り回されることもなくなるでしょうから、この辺はシステム導入などに期待したいところです。もちろんカスタマーセンターの人員増やすことも大事ですが、コスト面や教育などのバランスもありますからね。
2 についてはケースバイケースかもしれませんが、もし初期不良なのであれば “格安スマホ” を提供する通信会社の責任かと思われるので、暴れたらどうにかなりそうなものです。もし私が通信会社やメーカーから『代替機の貸し出しサービスはない』なんて言われようもんなら怒鳴り散らかしてキッチリと責任は取らせますけどね。あくまでも初期不良だったらの話ですが。
暴れた過去の事例
私自身の事例として、過去にヨドバシカメラで購入した EPSON のプリンターが数日で動かなくなったのでヨドバシカメラに問い合わせたらEPSON に連絡してくれってことだったので連絡したのですが、上の事例と同じように引き上げ修理で修理中の代替え機は用意できないって言われたのでなんでこっちがその分の損失を他で補わないといけないのか問いただしまくって怒鳴ったら代替え機を用意してくれたということがあります。
怒鳴るのがいいことではないですが、明らかに商品を提供する側やその商品そのものに問題があってユーザーが迷惑被るならその分は提供する側が責任もってカバーするのが本来あるべき姿でしょう。こんなことサービス以前の話かと思いますし、ユーザー側も泣き寝入りすることではないですよね。
事例 3 / 4 / 6 はユーザーの認識不足では?
事例 3 / 4 / 6 については単なるユーザーの認識不足で終わる話かと思います。特に 3 / 4 の MVNO がキャリアメールを提供していないの件と SIM ロックの件は国民生活センターがわざわざ事例として挙げるほどのことではないはず。こんなことを事例として挙げるから一般ユーザーの知識が一向に向上しないんだと、私は思います。こういうような弱者に目線を合わせる今の社会の流れ自体が問題かと。
SIM カードが届かない間の利用料金発生についてのトラブルを事例として挙げている 6 については、もし配送中の SIM カードが紛失してしまっているのであればそれは配送業者の責任かと思うので、そこはキッチリと配送業者に責任を負わせるべきかと。単に SIM カードが発送されてから届くまでの数日のことに文句を言っているのであれば、そこは契約をするときに確認すべき事項なので単なるユーザー側の認識不足ですよね。責任の所在が不明確なものを事例として挙げてもな、って感じ。
そもそも
今回の国民生活センターの【こんなはずじゃなかったのに!“格安スマホ” のトラブル】は MVNO に関するトラブルが増加しているということで公表されてはいるのですが、そもそもMVNO の利用者は年々増えています。分母が増えれば分子も増えるのは辺り前。なんでわざわざ国民生活センターが今回のような形で公表したのか疑問ですし、公表するのであれば契約数に対するトラブル件数の比率も開示して欲しいですよね。
こういう形で国民生活センターが公表すると MVNO への懸念が当然広がりますし、事業者にとっては業務妨害にも当たる行為にもなりえます。なのでもっと慎重に本質を見極めた上で公表すべきなにではなかったのかと、私は感じています。別に MVNO を応援しているわけでもないですし、3 大キャリアなどの MNO を嫌っているわけでもないですけど。
全体を読んでみてもそこまで懸念すべき点が多いわけではないようだったので、情弱のたわ言にいちいち付き合うなよな、ってのが私の感想でした。内容も内容だし、これを公表した国民生活センターも国民生活センター。
だからといって問題がないわけではない
MVNO の売りは MNO よりも利用料金が安くなるということで、この点を前面に押し出してプロモーションを掛けることは必然となるかと思いますが、そのためにユーザーが見えなくなってしまう部分は確かにあるかとは思います。それをちゃんと確認しないユーザーの責任にするのか、しっかりとわかるように明記しない事業者の責任にするのかは判断が難しいところ。
でも例えば「J-mobile」のデータ通信 SIM の最低利用期間設定や「FREETEL スマートコミコミ+」の落とし穴満載な内容など、明記はしているけど文字が小さかったりわかりにくい場所に書いてあったりで、確かに事業者としてのやり方はせこいですよね。「J-mobile」については SoftBank 回線を利用しているプランが LTE Band 41 に対応しているかどうかも把握していなかったということを当ブログでも紹介させていただきましたが、こういった部分もしっかりとカバーしておくべき事項です。
ただ企業が何かのプロモーションを行う場合に不利になる内容を開けっぴろげにするわけはないわけで、他社サービスなどと比較する際も自社に有利になるような内容にするのは当たり前のことです。こういったことを真に受けずに本質を見極める目を持つのもユーザーの努めなのかもしれないですね。
何にしろ、国民生活センターが【こんなはずじゃなかったのに!“格安スマホ” のトラブル】を公表した事実は変わらないので、これを機会に事業者側のあり方だけでなくユーザー側の知識向上も合わせて改善していくべきでしょう。MVNO など、“選択の自由” は選択する責任も発生するので、そこを無視したら話が前に進みません。